| ハリポタ(ハリー・ポッター)人気で、ファンタジーのとりこになった人は少なくないことでしょう。そう、ファンタジーは、けっして子供だけのためのものではありません。大人だからこそのめりこみ、大人だからこそ、よさがわかる良質なファンタジーをご紹介します。
少年ゲドは、血気にはやる若者だったころ、魔法の修業中、高慢と憎しみの心から、禁じられた呪文を唱えてしまいます。呼び出して、この世に放ってしまったのは、死の影。その瞬間から、ゲドは見えない影の恐怖におびえながら、さまよい続けます。しかし、師とあおぐ魔法使いの言葉をきっかけに、逃げ回るのでなく、自分のほうからその影を追い始めます。そして、影とは自分の分身だと気づくのです。追い詰めていった世界の果てで、ゲドがついに手にしたものとは…。
ことばと沈黙、光と闇、生と死、善と悪…世界はそういったものの均衡で成り立っていて、その均衡をうかつに崩すと、どうなるのでしょうか。
ゲドは、私たちひとりひとりなのかもしれません。冒険物語でありながら、無意識の心の闇、自己の内面での葛藤、精神的な成長などに迫るファンタジーの傑作です。みずからの心の闘いと重ねて読みながら、ゲドとともに苦しみ、いつしかゲドとともに救われていくことでしょう。 |