| 取材中にヒグマに襲われ、鮮烈な印象を残して、この世を去った星野道夫。生前の星野と偶然、道で一緒になって、ぽつぽつと言葉をかわしたことがあります。「日本よりアラスカのほうが住みやすいですか」と聞くと、遠い目をしながらも「僕には、そうです」ときっぱり。毅然としながらも、どこかさびしそうで優しい目は、彼の編み出す写真集や文章そのものでした。
本書は、未発表写真を含む40点ほどの写真と、著作から引用した文章で新たに再構成した“Michio’s Northern Dreams”シリーズの1冊目です。
極北の暗黒の空にたなびくオーロラ、アラスカで生の営みをくりひろげるシロクマやアザラシなど動物たち、凍てつく大地、きんと張り詰めた空気…。「誰だって、他人の人生を分かち合うことなんてできはしないように、それぞれの人間にとって、同じ風景がどれほど違って映るものなのだろうか。」
星野自身がそう書いているように、同じ写真や文章でも、感じかたは人それぞれでしょう。歩き疲れて、ちょっと一休みしたくなったとき、自分の心を映す鏡になりそうな1冊です。 |