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心を癒してくる本

忘れそうな、大事なこと


登場人物は、7歳の主人公と60を越した女性。年は離れていますが、一緒に暮らす、いとこどうしであり、無二の親友でもあります。
毎年11月のある朝がくると、ふたりはクリスマスに向けて30個ものフルーツケーキを焼くための準備にかかります。

彼女は、映画を見たこともないし、レストランで食事したことも、家から5マイル(8キロ強)以上離れたことすらありません。だけど、おいしいフルーツケーキの焼きかたを知っているのです。森の中のきれいなモミノキがある場所、きれいな凧の作りかたも。

ふたりは、お金とも贅沢とも無縁ですが、犬のクイーニーとともに、居心地のいい、ぬくもりのある世界に暮らしています。ほかの人が忘れているような世界の美しさ、人のあたたかさ、生の輝きに気づきながら……。その世界は長くは続かないのですけどね。

大人になるにつれて、さまざまなものを持つようになります。仕事も、お金も、家庭も、出世欲、名誉欲、自己顕示欲…ほかにもいろいろ。その一方で、失っていくものがどれほどあることでしょう。年に一度、この季節が来ると読み返したくなる本です。村上春樹の訳、山本容子の彩色銅版画ともにすばらしい1冊です。




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■書籍クレジット
『クリスマスの思い出』
著者:トルーマン・カポーティ
訳者:村上春樹
発行所:文藝春秋
定価1,571円(税別)


■著者紹介
トルーマン・カポーティ
1924年、ニューオリンズ生まれ。4歳のとき両親が離婚し、南部に住む親戚の家に次々と預けられて転々としながら過ごす。17歳で「ニューヨーカー」誌のスタッフになり、23歳で出世作『遠い声、遠い部屋』を発表。若き天才作家として、世界的に注目される。34歳 のとき中編小説『ティファニーで朝食を』を出版して、3年後に映画化。数々の奇行で知られ、ゴシップ欄の常連でもあった。84年、逝去。『クリスマスの思い出』はカポーティの幼少時の自伝風の作品。後世に残るであろう多くの優れた短編を残した中で「この『クリスマスの思い出』ほど多くの人に愛され好まれたチャーミングな短編は他にないのではないだろうか」と、村上春樹氏が書いています。





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