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vol.3:模様替え


ティーカップが人生を変える事だってある

大阪にいる、松本光太郎の恋人、森山瞳。松本とは結婚を前提に長距離恋愛中。


→登場人物プロフィール


これも一期一会


春を迎え、瞳は部屋の模様替えを計画していた。春の暖かい日差しが差し込む中、インテリア専門誌や女性誌をパラパラとめくりながら、あれこれと自分の部屋をどうしようかと思いを巡らせていた。

ページをめくっているうちに、一客のティーカップが目に留まった。ティーカップというよりも紅茶を飲むボウル。なんとも可愛らしい模様で存在感がある。雑誌のパリの特集に載っていたボウルで、パリで売っている物らしいが日本でも購入できると書いてある。瞳は、そのボウルが無性に欲しくなり、雑誌に書いてある連絡先に電話する事にした。なんだか、そのティーカップが自分に呼びかけているような気がしたのだ。

「もしもし、雑誌を見て電話をしているんですけれど、あのティーカップ、そちらに有るでしょうか?」
「ええ、在庫ございます。よろしければ、お取り置きしましょうか?」
「あ、いえ、私大阪から電話しているんです」
「それでは、代金引換でお送りする事もできます。ただし、送料と代金引換の手数料が加わりますが、それでよろしければ」。
「送っていただけますか?! 良かった。じゃあ、同じ柄の色違いで二客お願いできますか?」

電話を置いて部屋に戻った瞳は、そのティーカップでミルクティーを飲んでいる姿を想像してみた。窓から差し込む朝の光にレースのカーテンが白く輝き、テーブルの一輪挿しにはガーベラが一本……………
想像を始めると、止めどなくイメージが広がっていく。イメージが広がるほどに、今の自分の部屋とのギャップが大きくなり、模様替えへの意欲が更に強くなっていく。しかし、当初の予定は、机やベッドなどの家具の位置を変えて、カーテンの色を変えるくらいしか考えていなかった。イメージしたとおりに模様替えをしていこうとすると、家具の買い換えやリフォームにまで話が及んでしまいそうだった。当然、そんな出費を考えているはずもない。そもそもは、一客数千円のティーカップが目に留まったことが始まりだ。

瞳は、この、ほんの1時間ほどの自分の行動を振り返った。雑誌のティーカップの写真に目が留まり、電話をして購入。そのティーカップが在る空間をあれこれ想像しながら、とても充実した時間を過ごしていた。何をする訳でもないのに、自分でも驚くくらい具体的にどんどんイメージが広がっていき、目の前に素晴らしい空間ができあがっていた。
社会人になってもずっと両親と一緒に暮らし、子どもの頃から変わらない自分の部屋が、イメージの中でこんなに変わるとは思ってもいなかったし、考える事もなかった。
そして、自分の中で何かが弾けた気がした。

「なんなんだろう、この感覚。何かができそうな、自分が変わりそうな不思議な………」

そこに、恋人の松山光太郎から携帯に電話が入った。

「瞳? 光太郎だけど。来週末、そちらに出張を兼ねて行こうと思っているけど、週末の都合はどう?」
「もちろん会えるけど、昇進はできそうなの?」
「うっ……… もうちょっとだから、もう少し待てよ」。
「そう……………。 私ね、今、ある事に気が付いたの。ひょっとしたら私、インテリア関係の仕事に向いているんじゃないかって。自分の部屋の模様替えを考えていたら、イメージが膨らんでどんどん具体的なプランが頭の中に湧いてくるのよ。資格取って転職しようかな」
「オイオイ、転職なんてやめてくれよ。大阪へ行く楽しみが減っちゃうじゃないか」。
「でも、本当にインテリアに興味が湧いてきたの。会社辞めて、本格的に勉強したいなっていうのは本当の気持ちなんだけどな」
「別に会社辞めなくても、勉強くらいできるだろう?資格取るのは良いけど、転職なんか考えないでくれよな」

 

次回をお楽しみに・・・

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